ラードや牛脂の使い方をご存知でしょうか?
植物性の油脂の方が動物性の油脂よりも健康に良いと良く聞きますが、実は最近は最も健康を害するのはトランス脂肪酸であり、安い植物油が最も危険なだけで動物性の油脂は植物性の油脂に比べてそんなに体に悪くないとも言われるようになってきました。
むしろ動物性の油脂の方が植物性の油脂に比べ美味しさでは上ですし、動物性の油脂にも色々なメリットはあり、多くの人が気にしがちである体重への影響も実はそんなに変わりないと言うことも言われており、最近動物性の油脂をすすめるような話も良く聞くようになりました。
しかし動物性の油脂と言われても殆どの日本のご家庭で普通に使われているのはバターぐらいのものであり、ラードや牛脂を常備しているご家庭はまず無いでしょうし、ひょっとしたら一度も料理する時に使ったことがないと言う方だっていらっしゃるでしょう。
もっと言えばそもそもラードや牛脂はどうやって使うものなのかや、ラードと牛脂の違いはなんなのか、お互いに代用として使えるものなのかと言ったこともご存知で無い方は少なくないでしょう。
そこで今回はそんな日本のご家庭で使うにはあまり一般的ではないラードと牛脂についてのそれぞれの特徴はもちろんのこと、違いや代用できるようなものなのかなどをご紹介させていただく『ラードと牛脂の違いとは?代用はできるの?』と言う記事を書かせていただきました。
最近ではむしろ体に良いとさえも言われるようになったラードと牛脂について興味があったりはしませんか?
ラードと牛脂の色々な違い
まず始めにラードと牛脂にはどんな違いがあるのかをご紹介させていただきます。
箇条書きで書き出しますとそれぞれの違いとしては以下のようなことが挙げられます。
- 原料
- 構成成分
- 融点
- 旨味・匂い
- 保存期間
まず原料についてですが、ラードは豚の脂肪全般のこと、またはクリーム状になった、豚の脂肪の不純物を取り除き、練って冷やして固まらせ、更に香料を添加した調味脂のこと。
それに対して牛脂は牛の肉のブロックを作る際に不要として切り落とした脂身部分のこと、または牛の脂肪の不純物を取り除き、練って冷やして固まらせたものです。
もっと言うならばラードは豚の背脂を主に使うのですが、牛脂の場合は「ケンネ脂」とも言う牛の腎臓周囲につく脂が主に使われる特徴があり、牛脂の場合はどの部位の脂肪なのかや精製具合で別物として扱われており、その価値にバラつきがあります。
当然原料が違うため同じほぼ脂質100%であってもその構成成分も以下のように異なります。
ラード
- 飽和脂肪酸 39.29g
- 一価不飽和脂肪酸 43.56g
- 多価不飽和脂肪酸 9.81g
牛脂
- 飽和脂肪酸 49.8g
- 一価不飽和脂肪酸 41.8g
- 多価不飽和脂肪酸 4g
こうして構成成分が異なるため、融点も異なりラードは27から40℃、牛脂は35から55℃で、ラードの方は大体常温でもクリーム状になっていますが、牛脂は常温では殆どの場合固形のままですし、旨味や匂いも結構違いがあります。
もう少し具体的に言いますとラードの方が基本こってり系で口に残る甘味に近い旨味が強く、「臭い」と感じる人が多い系統の臭いであり、牛脂の方はそれに比べると少しあっさり系のコクが強い旨味で臭いもラードに比べると少なく、融点を超える高い温度で加熱しないと特に臭い自体を感じない人が多いです。
その他では保存期間も少々異なり冷凍してしまうなら別ですが、冷蔵庫でも常温でもラードの方が少々長持ち。
ラードは冷蔵庫で1週間は安泰で2週間持たせることもできますが、牛脂の場合は生肉と同じで冷蔵庫でも3日を超えると悪くなり始め、1週間はまず持ちません。
これ以外にもラードの方が使用される幅が広いだとか、牛脂の方が値段のバラつきがあるだとかこまごまとした違いはありますが、以上の5点が主な違いだと思っていただいて大丈夫です。
ラードと牛脂の共通点
続いては反対にラードと牛脂の共通点についてをご紹介させていただきます。
こちらも同じく箇条書きにしますと以下の通り。
- 動物性の油脂である
- 常温では液状ではない
- 非常にコクや旨味が強い
違いと比べると思ったよりも少ないと思う方も多いでしょうが、これぐらいしかラードと牛脂には共通点はありませんでして見た目こそ似てはいますがほぼ別物。
コクや旨味が強いと言う共通点も厳密に言えば味として感じる種類は異なり、日本人に分かりやすく言うのであれば「カツオ出汁」と「昆布出汁」ぐらい違います。
ですが、動物性の油脂として構成比率は違うものの大体同じような成分が含まれていてコクや旨味の元となり、融点が常温では液状ではないが50℃ぐらいに温めれば液体になる程度のものである、と言う共通点があるためにそれぞれをそれぞれの代わりとして使うことも出来なくは無く、代用品としてお互いを使うこともある程度は可能なのです。
ラードと牛脂をそれぞれの代用として使える料理について
ラードと牛脂は共通点があるために代用品としてお互いを使うこともある程度は可能とご紹介したわけですが、ではどんなものにならば代用可能でそれぞれを代用した場合どんな違いが出るのかをこちらではご紹介させていただきます。
ざっくりとどんな時にそれぞれ代用できて、出来た料理に違和感がどれほどあるかと言うと以下の通り。
- 揚げ物 代用可能 違和感少なめ
- 汁物 代用可能 違和感少なめ
- 炒め物 代用可能 違和感少なめ
- 焼き物 代用可能 料理によっては違和感あり
- パンや菓子 代用可能 違和感ややあり
- 非加熱食 代用不可能
より詳しく述べますと以下のことが言えます。
まず炒め物や単純に肉を焼くだけなどの料理については融点こそやや異なりますが、使い方は全く同じで代用可能です。
ですがコクや旨味のベースが違い、匂いも異なるたるため違和感は感じるでしょうし、美味しさと言う意味では料理によっては劣ります。
最も違和感が出ないであろう料理はハンバーグです。
元々が牛と豚との合挽きで作る場合が圧倒的に多く、それぞれの肉の味と脂の味が合わさることでの美味しさがウリなので、ラードの代わりに牛脂でも牛脂の代わりにラードでもどちらの味の主張が強くなるかと言う程度の違いで大きく違和感は感じないでしょう。
致命的に味が変わるのはステーキです。
素材の味がものを言う料理ですので、ステーキを焼く時にラードを使うとどうしても脂の質の違いから脂のこってり感と旨味成分の違いで結構違和感を感じ、どこと無く安っぽさを感じる人が多いでしょう。
濃い味のステーキソースやパセリバターなどのトッピングで誤魔化せないレベルではありませんが、その違和感はレアに近い焼き加減で焼けば焼くほど強くなるので塩コショウのみで出来るだけレアが好きと言う方にはラードを代用として使うのはオススメできません。
汁物や揚げ物にお互いの代用として使うのも問題ありません。
スープの出汁としてはラードの方が多く使われますが、少々こってりさと甘味で違いがあるもののラーメンのスープを作る時むしろ牛脂を使うと言うお店もありますし、カレーやシチューなどの具材が多くとろみのある汁物には牛脂の方が多く使われますが、あくまでも複数ある出汁の内の1つでしかないために、調整を余程失敗しなければラードを使ってもそれはそれで美味しく出来ます。
揚げ物の油としても同じで高温の調理とこってりした料理であることが大前提ですからラードの臭いとこってりさがむしろマッチするのでラードの方が向いていますが、牛肉や野菜などを揚げる料理を作るならば牛脂をラードの代わりにした方が美味しいものもあるほど。
正しどちらの場合でも元々ラードか牛脂のどちらか100%使う料理になれている方の場合、関東風のうどんの汁と関西風のうどんの汁ぐらいの違いを感じる人もいるので、同じように使えても完成品まで同じ出来にはならないことは覚えておいて欲しいです。
またパンの生地に練りこんだり、クッキーや沖縄のちんすこうなどのお菓子に使うラードを牛脂に変えるのも出来なくはないです。
正しやはりラードが隠し味の決め手となるような完成品の味や匂い、口当たりには違いを感じる人はいるようです。
問題となるのはラードをそのままパンに塗ったりご飯に混ぜただけの純粋な味を楽しむ料理。
味や匂いの違和感は我慢できても融点の関係からラードよりも牛脂の方が溶けにくく、口当たりに違いが出るからです。
そして何と言ってもラードと違い牛脂の場合は精製されていない切り落とした脂身の部分も牛脂として良く扱われることもあるため、ちょっと暖かいぐらいの温度では溶けきらない部分も多く残ることがあります。
当然同じような理由でしっかりと過熱するような料理に関してでなければあまり牛脂での代用はオススメできません。
人によってはそんな些細なこと気にしないと言う方もいるでしょうし、むしろ代用した方が好みと言う方もいるでしょうから、非加熱で食べるもの以外にならばお互い代用は可能ですので最終的にはお好みでとしか言えないのですが、そもそも全く使わずに普段料理している人の方が多いはずなので無理に代用させてまで料理をする必要は全くないのですが、ラードや牛脂を普段から良く使っていると言う方は参考にしてみてください。