味噌は、飛鳥時代に中国や朝鮮半島から伝わってから発展し、鎌倉時代には、今と同じような味噌ができていました。
そんな昔から食してきた味噌は、日本人の体に合ったもので、寒い地方では塩分が強かったり、暖かい地方では甘かったりと、その土地に合ったように改良されていった、とても身近な食品です。
また、昔は、味噌は各家庭で作られていて、その作り方を代々伝えられていました。農村では、嫁が味噌を作れるようになると、世帯を譲るということもあったようです。
しかし、残念なことに、近年では、食の欧米化に伴って、味噌や味噌汁を食する習慣が薄れてきています。
そこで、味噌の素晴らしさを改めて知っていただくために、『味噌の栄養と成分』や『味噌汁の効果』について、お伝えしていきます。
味噌の栄養成分
味噌の原料である大豆は、良質なたんぱく質や脂質、糖分やビタミン、ミネラルを含んだ栄養価の高い優れた食品ですが、消化吸収されにくいのが難点です。
ところが、大豆を発酵して味噌にすると、その高い栄養素が酵素によって分解され、消化吸収されやすくなります。
味噌の栄養成分
- イソフラボン
- ビタミンE
- リノール酸
- 食物繊維
- コリン
【イソフラボン】
大豆の代表的な栄養素です。
酸化を防止し、アンチエイジングや美肌に効果があります。また、肩こりも解消します。
【ビタミンE】
抗酸化作用があり、老化防止やアンチエイジング、美肌に効果があります。
【リノール酸】
シミやそばかすの原因になるメラニンの生成を抑制してくれます。
また、血中コレステロールの上昇を抑えるので、動脈硬化や心臓疾患を予防します。
【食物繊維】
腸の働きを促し、便秘を解消してくれます。
【コリン】
聞きなれない栄養素ですが、肝機能を高める効果がある優れた栄養素です。
特に、脂肪肝に効果的で、肝臓に脂肪が蓄積されるのを防いでくれます。
味噌汁の効果
お味噌だけでも栄養価の高い食品ですが、野菜や海藻類、豆腐などを具に入れて食べるお味噌汁にするとその効果はさらに高まります。
お味噌汁の効果
- がん予防
- 生活習慣病対策
- 減塩効果
- 骨粗しょう症予防
- 糖尿病予防
【がん予防】
男女ともに、毎日味噌汁を飲む人の方が、飲んでいない人に比べて、がんの発症率は低くなります。
女性の乳がんも、毎日3杯飲むと発症率が低下するとの研究結果もあります。
味噌の塩分は、がんを促進しないことが分かっていますし、味噌に含まれる酵素などの働きが、がんの発生物質を除去します。
【生活習慣病対策】
味噌の成分には、血中コレステロールの上昇を抑える効果があります。
血中コレステロールが上昇すると、動脈硬化など血管の病気にかかりやすくなり、それが進行すると、脳梗塞や心筋梗塞などになる恐れがありますので、血中コレステロールの上昇を抑えることは、これらの病気を予防することにつながります。
また、味噌汁の具によく使われる野菜やイモ類には、カリウムが多く含まれています。カリウムには、血管を拡張される作用があるので、血圧が急激に上昇するのを抑えてくれます。
同じく、味噌汁の具に使われるわかめなどの海藻類には、マグネシウムが豊富です。マグネシウムは、カリウムが細胞内に流れ込むのを抑えてくれます。
カリウムやマグネシウムは、煮汁に溶けだしますが、お味噌汁だと無駄にせず摂取することができるのです。
【減塩効果】
味噌が身体に良いとは言っても、食べすぎると塩分の過剰摂取が気になります。
しかし、味噌は同じ塩分量でも、食塩で摂るのと比べて30%の減塩効果があります。
血圧の上昇も緩やかですし、腎臓への負担も軽減されたり、心不全の進行を抑制しますので、臓器への負担を軽減してくれます。
塩分が気になる方は、味噌を隠し味に使うなどして、調理を工夫されると良いですよ。
【骨粗しょう症予防】
骨粗しょう症は、カルシウムが不足して起こりますので、カルシウムを多く含む食品を、継続的に摂取する必要があります。
味噌汁には、だしを取るときに使う煮干しや削り節、具に使う豆腐やわかめ、葉物野菜などにもカルシウムが含まれますので、味噌汁は、毎日のカルシウム源の大きな割合を占めることになります。
また、野菜類を摂ることで、ビタミンも一緒に摂取できますので、一石二鳥ですよ。
【糖尿病予防】
味噌を熟成する過程で、褐色色素(メラノイジン)が発生します。
これは、糖分の消化吸収速度を遅くして、食後の血糖値の上昇を抑えてくれます。
さらに、膵臓の働きを良くして、血糖値を下げるインシュリンの分泌も盛んにしてくれますので、糖尿病の予防になります。
イソフラボンの二面性
大豆の成分として有名なイソフラボンには、女性ホルモンのエストロゲンと似たような働きがあります。
女性ホルモンは、乳がんの発生を促進しますが、大豆イソフラボンは、エストロゲンの分泌が多い時には、先回りして、受容体と結合して、エストロゲンの働きを弱めてくれます。
そのため、乳がんの発生を抑えてくれるのです。
しかし逆に、閉経後などエストロゲンの分泌が少なくなると、女性ホルモン用作用を発揮して、分泌が低下したエストロゲンの代わりになってくれます。
このように、大豆イソフラボンには、二面性の働きがあるので、お味噌汁は、若い女性から年配の女性まで幅広く、おすすめしたい食品です。