濃口醤油と薄口醤油って何が違いか分かりますか?
恐らくかなり多くの方は見た目の色の違いや塩分濃度の違いがあることをご存知だと思いますし、中には香りの違いや甘味の違いが分かる方もいるかも知れませんが、どのような使い分けをするのが望ましいのかや製品の企画としての違いを知らない人は多いかと思います。
そこで今回はそんな濃口醤油と薄口醤油の違いや使い分け・代用などについてをご紹介させていただきます『濃口醤油と薄口醤油の違いや使い分け!塩分濃度や代用はできる?』と言う記事を書かせていただきました。
日本人にとって身近過ぎて意外と知る機会がない濃口醤油と薄口醤油の違いについて興味はございませんでしょうか?
醤油の種類について
濃口醤油と薄口醤油の違いを知ってもらうために、こちらでは醤油の種類の定義についてをご紹介させていただきます。
まず日本農林規格(JAS規格)によって醤油は以下の5つに分類されています。
- 濃口醤油(こいくちしょうゆ)
- 淡口醤油(うすくちしょうゆ)
※正式な表記では「薄口」ではなく「淡口」だそうです。 - 再仕込み醤油(さいしこみしょうゆ)
- 溜醤油(たまりしょうゆ)
- 白醤油(しろしょうゆ)
この5つの種類の醤油はそれぞれ原料の比率や添加物、製法の違いから「別物」として扱われておりまして、同じ醤油でもそれぞれ特徴があり、ものによっては代用が出来ずきちんとした使い分けが必要です。
しかしこの5つの種類の中でも今回のテーマとしております「濃口醤油」と「薄口醤油」はともに汎用性が高く、お互いの互換性も高いことから大雑把な意味ではあまり明確な使い分けの必要はなく、お互いが代用品としてそのまま使えると言う特徴があります。
その為醤油全体の生産量の95%近くを濃口醤油と薄口醤油が占めており、多くの日本人にとって「普通の醤油」と言えば、大概このどちらかのことだと言うのが定説です。
濃口醤油と薄口醤油の違い
醤油にどんな種類のものがあるかを簡単にご紹介させていただいたところで、続いて濃口醤油と薄口醤油にはどんな違いがあるのかをもう少しだけ具体的にご説明させていただきます。
まず濃口醤油ですがJAS規格において
大豆にほぼ等量の麦を加えたもの又はこれに米等の穀類を加えたものを醤油麹の原料とするもの
とされております。
では薄口醤油はどうなのかと言いますと同じくJAS規格において
大豆にほぼ等量の麦を加えたもの又はこれに米等の穀類若しくは小麦グルテンを加えたものを醤油麹の原料とし、製造工程において色沢の濃化を抑制したもの
とされています。
つまり簡単に言いますと薄口醤油は原料に使う小麦の量、色が濃くならないように発酵を抑えるため製造過程で加える塩の量の2つが平均的に多くなる傾向があると思っていただけたら良いです。
その為見た目こそ薄口醤油の方が薄い色合いですが、塩分濃度は濃口醤油約16%に対し、薄口醤油が約18%と高く、名前や見た目の印象とは異なり薄口醤油の方がやや塩気が強いです。
その他にも発酵を抑えてある関係上薄口醤油の方が濃口醤油に比べ醤油独特のあの香りも薄く、醸造過程の仕上げには甘酒や水あめを加える製品が多く、よほど良い舌をお持ちの方だと薄口醤油の方が甘みを感じると言う方もいるそうです。
それぞれの特徴を活かす使い方の基本
それぞれ同じ醤油でありながらも違いがあるなら、それぞれの特徴を活かした使い分け方と言うものももちろんあり、こちらではその基本となる例をいくつかご紹介させていただきます。
まず改めましてそれぞれどちらの醤油の方が強いかの特徴を箇条書きにしてみますと以下の用な感じです。
- 色の濃さ 濃口醤油
- しょっぱさ 薄口醤油
- 香りの強さ 濃口醤油
- 旨味の強さ 濃口醤油
臭いの強いものを調理したり香りをつけたいものには濃口醤油
素材の香りや見た目の色を引き立てたいなら薄口醤油
という使い分けが基本です。
より具体的に言いますと刺身に使うなら油が強く、臭いも強い青魚やサーモン、マグロ、肉類を食べる時には濃口醤油、白身の魚やたたきや湯引きにしたものを食べる時には薄口醤油がより好ましいです。
煮物にしても原理は同じ、肉や魚と言った臭み取りをして煮るものには濃口醤油、野菜などの煮物には薄口醤油。
他にも醤油の焼けた時の香りは強い方が多くの日本人は食欲欲をそそられることから焼き物やそのタレには濃口醤油、香りや味の主張が控えめなことから洋風の料理や隠し味として使ってあることを隠したい時には薄口醤油と言った使い分けが基本となります。
ですが、どちらの調理や食べ方の場合にどちらの醤油を使ったとしても、それに合わせて量を減らしたり増やしたり調整する必要があるほどの違いは基本的にありません。
唯一気にすることをおすすめするのが洋風の料理の隠し味に濃口醤油を使う場合。
基本的に洋風と言うかヨーロッパ地方の料理においては塩味の基本は塩だけ、香りづけはハーブ、スパイスだけで行いますから、こうした料理に隠し味として醤油を使う場合そもそも違和感を感じることが多いのですが、濃口醤油を使う場合やけに目立ち「全く隠れない隠し味」となる恐れもありますので、代用として使う時はご注意を。
もちろん使う食材や調理方法によっていくつも例外と言うのはあるものですし、あくまでも料理の美味しさは個人の好みで一番左右されるので、今回ご紹介させていただいたそれぞれの醤油の使い分けと言うのはあくまで基本です。
絶対にそうした方が良いと言うものでもなく、代用としてどちらの場合にどちらを使っても基本的に大きな味や香りの違いが出ることはほとんどないのでどちらかだけ家に置いておいても良いのですが、拘る方などはこうした違いによる使い分けを一度試してみて欲しいと思います。
それぞれの特徴を活かす使い方の応用
最後になりますが、拘る方たちへのためのそれぞれの醤油の特徴を生かした場合の「五味」との相性についても軽くご紹介させていただきますので参考にしていただければと思います。
甘味との相性
甘みの強い料理の多くや醤油自体に甘味が強い再仕込み醤油のような醤油から分かるように、日本人の多くにとっては色や香ばしいタイプの香りが濃い目のものの方が甘味があっても違和感を感じにくい傾向が強いです。
その為甘味がある料理やつけて食べる調味料に使う場合は濃口醤油がおすすめです。
酸味との相性
日本人にとって酸味とはさっぱりした味付けの代名詞と言っても良いですから、その為見た目も香りも薄い方が相性が良く、薄口醤油を使った方がより好まれる傾向にあります。
例外としてここに中華料理などのように辛みを加える場合に関しては赤い色が入る場合が多いため、その色を強くするために濃口の方が食欲をそそると言うケースもあります。
塩味との相性
基本的に醤油自体が塩味をつける調味料ですが、これ以外に塩味をつける調味料と合わせて使う料理も多数あります。
その場合そもそも色を薄く仕上げたい場合が多いこともあり、他の味や香りと喧嘩しにくい薄口醤油がおすすめです。
苦味との相性
苦味と言うのは元をたどれば舌へのアクセントとして他の美味しさを感じるための味であり、脳への刺激の話で言えば辛みとほぼ同じ。
その為香りや味が強い濃口醤油との相性の方が良いです。
旨味との相性
旨味と言うのはそもそも明確な味ではないが、脳が美味しさの基準として判断するための物質であるわけでして、他の味や香りが強いと感じにくい性質の味。
味だけならば濃口醤油にも思えるでしょうが、香りや醤油自体の旨味も強いことから考えて、薄口醤油の方が旨味を引き立てるのには向いています。