暑い時期になるとゼラチンを使って作るような、見た目も涼しげなゼリーなどが喜ばれるもので、そうしたものがダイエット効果もあると言われていることから、試しに作ってみようと言う方も多くなるもの。
しかし実はそうした液体を固めてお菓子を作るための「凝固剤」にはいくつか種類があり、良いものを作るためには使い分けが必要で、美味しいお菓子を作るためにはそれぞれがどんな特徴があるのかを知っておくに越したことはありません。
例えばゼラチンがどんな成分から出来ているから、どんな料理に代用できるのか?とか、寒天はどれほどカロリーがあり、どれぐらいの固まる時間が必要なのか?あるいはアガーとはどんなもので、どのぐらいの値段がするものなのか?なども使い分けたい人にとっては知っておきたい所。
そこで今回は、そんな代表的な凝固剤であるゼラチン、寒天、アガーについてのそれぞれの特徴や主な使い方やそのコツ、そしてそれぞれの代用品になりそうなものをご紹介する『ゼラチンと寒天とアガーの違いとは?代用はそれぞれ可能なの?』と言う記事を書かせていただきました。
夏にぴったりなお菓子を作るのに必須の凝固剤について興味はございませんでしょうか?
それぞれの凝固剤の特徴
まずはそもそも一般的に使われる凝固剤にどんな種類があり、それぞれどんな特徴があるのかをご紹介します。
ゼラチン
最も口どけが良く、一般家庭でもよく使われる凝固剤。
100グラム当たり、388キロカロリーと以外と高カロリーですが、一度で使う量は全体の質量の2から3%(500gでも10~15g)なのでそこまで気にする必要はありません。
粘性が強く弾力もそこそこあるので柔らかい仕上がりになるのが特徴。
その為主な用途としてはゼリーやムース、ババロアなどに使われます。
原料は豚や牛などから抽出した動物性タンパク質のコラーゲンでして、25℃以上の温度では溶けてしまう性質があり保存に注意が必要ですが、この性質が「口の中でとろける」食感を生み出します。
また同じゼラチンでも、板ゼラチン・粉ゼラチン・顆粒ゼラチンと更に種類が更に分けられており、それぞれにまた別の使い方や仕上がり具合の特徴があります。
値段は凝固剤の中で最も安い部類でどこのスーパーでも簡単に手に入ります。
寒天
最も凝固力が高く、少ない量で多くの水分を固めることが出来る凝固剤。
歯ごたえを感じることが出来て、弾力がないため噛むとほろっと崩れる歯切れの良さを持った仕上がりになるのが特徴。
その為主な用途としては羊羹や杏仁豆腐などに使われます。
原料は天草やオゴノリなどの海草でして、大量の食物繊維を含んでいるため低カロリーと言うか0カロリーでダイエットに向いていると言われています。
また寒天にも棒寒天・糸寒天・粉末寒天の3つの種類がありますが、使い方がそれぞれ少し変わるものの、ゼラチンほど仕上がりに違いが出ない特徴があります。
値段的にはゼラチンよりは安くありませんが、余程良いものを買おうとしなければそこまで高いものでもありません。
アガー
比較的近年登場してきた恐らく知名度は最も低いであろう凝固剤。
丁度ゼラチンと寒天の中間のような食感の特徴と、完成品が高い透明度になること、非常に型崩れしにくいこと、0カロリー、温度変化に強いなどの特徴があります。
その為主な用途としてはゼリーやプリン、そしてグラッサージュのために使われます。
原料は「カラギーナン」という海藻由来の食物繊維と「ローカストビーンガム」というマメ科の種子の抽出物でして、完全に無味無臭なことや完成品が常温でも冷凍でも保存できる強みがあります。
ただしアガーは長所が多い分使いこなすための注意点も多く、更に製品ごとでその注意点もかなり異なり、使用するアガーが作りたいお菓子に適しているかどうかをしっかりと確認する必要があります。
またあまりスーパーなどでは常備していない所も多く、買う時もややお値段が高めです。
それぞれの凝固剤を使う時の注意点
こちらでは代表的な凝固剤を使う時のそれぞれの大まかな注意点をご紹介させていただきます。
ゼラチン
液体を固めるために必要な量は大体他の材料の水分量の2から3%(500CCに対して10~15g)で、透明度は高いもののやや黄色い色味があります。
タンパク質を熱で溶かし、冷える時に水分を絡め取らせて固めるという原理で液体を固めるものですから溶かす時にゼラチンを加熱しすぎたり、強い酸性のものやタンパク質を分解する酵素を持つものを固めようとすると固まりにくくなります。
低温になりきってからでないと固まらないですし、固まるのを邪魔するものも多く、固まるまでの時間が長めで冷蔵庫に入れてから平均3時間から6時間ほど、長い時では1晩かかります。
また使う時には顆粒ゼラチン以外は一旦水でふやかしてから使う必要があり、一般的な板ゼラチンならば大量の冷たい水に10から15分ほど浸けてふやかし、よく水気を取ってから50℃から60℃の温度に温めた固めたい液体に入れ、しっかりと溶かして使う必要があります。
一般的な粉ゼラチンの場合は、使うゼラチンの約4~5倍の冷たい水に10から15分ほど浸けてふやかし、その後ふやかすのに使った水の分量を引いた分量の固めたい液体を50℃から60℃に温め、ここにふやけて水分を吸ったゼラチンを溶かして使う必要があります。
余談ですがゼラチンの使い方について、もっと詳しく知りたいと言う方は別記事【ゼラチンが固まらない原因と対処法!正しい使い方】も合わせて御覧ください。
寒天
液体を固めるために必要な量は大体他の材料の水分量の1から1.5%(500CCに対して5~7.5g)で、固まると透明度は高くなく、白っぽい色になります。
食物繊維を熱で溶かして冷える時に水分を外から包み込むように固める原理で液体を固めるものですから、ゼラチンより溶け難く、固める液体が不純物が多いもの(ミックスジュースや牛乳など)だったり、固めたい液体が高温でないと溶け切らないことがありますし、酸性のものを固める時には固まりにくくなります。
また寒天も粉末寒天以外は、一旦ある程度の大きさにしてから水につけて一晩ふやかしてから使う必要があり、常温でも固まり始めるためにゼラチンよりも事前の準備をしっかりした上で、料理を作る作業そのものも気持ち手早く行う必要があります。
固まる時間は比較的早く、シンプルなゼリーなどなら冷蔵庫で早くて30分、遅くても2時間あればほぼ確実に固まります。
その他にも砂糖一切使わずに液体を固めようとすると固まった時に見た目が白く濁り、水分が飛んでしまいやすくなるので砂糖を使わずに作りたいものには向いていないこと、ジュースや牛乳などを固める時は、一度先に濃い目の水だけに寒天を溶かした水溶液を用意し、これがさわれるぐらい冷めてからそこに固めたい液体を足す形をとる必要があるなどの手間が多く、ゼラチンよりも少し上級者向けの凝固剤かもしれません。
アガー
液体を固めるために必要な量は大体他の材料の水分量の1.5から3%(500CCに対して7.5~15g)で、固まっても無色透明。
液体を固める原理としては寒天に近いですが、寒天よりも溶け易く寒天よりもダマになってしまいやすい特徴があり、事前にグラニュー糖と混ぜてから90℃ぐらいに温めた液体に加えるのがオーソドックスな使い方。
40℃ぐらいから固まり始めるために、常温でも完全に固められるのですが、その分他の凝固剤を使って作る時よりも手早い作業が必要ですし、寒天程ではないものの酸性のものを固める時には固まりにくくなる特徴があります。
固まる時間は比較的早く、シンプルなゼリーなどなら冷蔵庫で早くて1時間、遅くても3時間あればほぼ確実に固まります。
お互いに代用として使うことは出来るのか?
結論から言いますと「ただ液体を固める」と言う目的を果たすためならば量を調整することで互いに代用可能ですが、食感や口当たりの差があるために完全に互換性が在るとは言えません。
また色と言うか透明度の違いもあり、完成品の見た目がイメージと変わることも少なくありませんし、使う食材によっては固めるために工夫が必要になることも少なくありません。
具体的にはそれぞれ以下のような違いが出ます。
ゼラチンをアガーの代用品に使う場合
まずアガーで作った完成品に近づけるためには少々多めに使う必要があります。
そして分量の調節がうまくいったとしても、食感がアガーよりも柔らかくなり、型崩れしやすく25℃と言う温度で溶ける為、保存や持ち運びがやや大変。
またかなりの種類の生のフルーツを固めることが出来ないところや、冷凍保存はできないところ、そして透明感で劣ることからグラッサージュに使うのには不向きな所が違いとして挙げられます。
辛うじてアガーで作りたい料理の中ではシンプルなゼリーやプリンぐらいならば代用可能と言えます。
ゼラチンを寒天の代用品に使う場合
まず寒天で作った完成品に近づけるためにはかなり多めに使う必要があります。
そして分量の調節がうまくいったとしても、食感がかなり柔らかく殆ど別物のように感じますし、型崩れしやすいく25℃と言う温度で溶ける為、保存や持ち運びの時同じようには扱えません。
また色味や透明度もかなり変わりますし、種類によっては独特の臭いが出てくることもあり、殆どの料理に代用できません。
寒天をゼラチンの代用品に使う場合
分量を抑えようとも食感が大幅に異なるものが出来てしまいます。
基本的になにを作る場合にしろ、ところてんもしくは固めの水羊羹ぐらいの柔らかさが限界ですからゼリーならともかく、プリンやババロアなどの口溶けが重要なものには代用不可能だと思って下さい。
寒天をアガーの代用品に使う場合
分量を抑えようとも見た目が大きく変わるため、見栄えの問題でかなりの差が出ます。
またうまく調整できてもやはり寒天を使って固めた完成品の方が固くなりますし、アガー以上に酸に弱いのでアガーでは固めることができたものが固められないこともあります。
見た目が何より大事なグラッサージュに使うのには当然不向きですし、プリンなどにもまず代用は不可能です。
辛うじて代用できそうなものと言えばゼリーや水羊羹ぐらいです。
アガーをゼラチンの代用品に使う場合
比較的互換性が高い組み合わせです。
しかしやはり食感と言うか口当たりが固めになり、弾力性が高く滑らかさが足りないため、どことなく「安っぽい印象」を抱くことが多いかと思います。
とは言え型崩れしにくさや保存できる温度や期間、固まるまでの時間の早さ、そのまま使える材料の多さや作れる料理の多彩さではアガーの方が勝っており、色々な料理をする人が使う場合、大量に作る場合、早く作りたい場合などはアガーの方が優秀です。
ゼラチンで作れるようなものを作る時に代用できないものは少なく、マシュマロやゲル状のままで仕上げるような料理以外になら大体代用可能です。
アガーを寒天の代用品に使う場合
多めに使うことでゼラチンよりはまだ寒天に近い食感にすることが出来ますが、やはり見た目や食感の違いが出てしまうところがあります。
具体的に言いますとやたらツヤっぽかったり、寒天よりも柔らかい仕上げになることから、どことなく「偽者っぽい印象」を抱くことが多いかと思います。
流石に羊羹やところてんなどへの代用に使うと違和感が大きいですが、杏仁豆腐やあんみつなどに入れる為の「寒天」ぐらいになら代用しても違和感が少ないかと思います。
以上のことからアガーならばある程度他の凝固剤の代用品に使えますが、その他では同じ液体を固めるためのものであっても代用品として使うのは難しいと思っておいてください。