加工デンプンとはどんなものかご存知ですか?
とてもありふれた成分であり、多くの食品に良く使われていることからデンプン自体を知らない人はあまり多くはないと思いますが、私たちが口にしているデンプンのその多くが実は天然デンプンの特性を改良したデンプンである加工デンプンと言うもので、このことを知らない人は意外と多いもの。
ましてやこの加工デンプンは用途ごとにかなり種類があったりすることや、食品に使う際の表示義務がちょっと特別なものであったりすること、そしてものによっては危険性があるとまで言われていることを知らない人は多いでしょう。
そこで今回はそんな加工デンプンと言うものについてをご紹介させていただきます『加工デンプンとは?危険性や食品への表示と用途』と言う記事を書かせていただきました。
私たちが知らないうちに最も多く口にしているとも言われる食品添加物加工デンプンがどういうものなのかに興味はございませんでしょうか?
デンプンとは?
加工デンプンについてご説明させていただく前にまずそもそもデンプンとはどんなものかを最初にご説明させていただきます。
デンプンとは基本的に植物の葉緑体において光合成が行われることで生成されるエネルギー源となる種子や球根などに多く含まれている炭水化物(多糖類)です。
その為実は特定の成分と言うわけではなく、あくまで植物の生きるために必要な貯蔵用エネルギーの総称であり、トウモロコシ、米、小麦、豆類、ジャガイモ、タピオカなど様々な原料から粒子の大きさも特性も全然違う同じデンプンと言う名前のものが作られています。
デンプン全般の特徴として挙げることが出来るのは白色の粉末状物質で水に溶けにくく無味・無臭であることと「糊化(こか)」と「老化(ろうか)」と言う性質があること。
この「糊化(こか)」と言う性質は水にデンプンを加えて加熱するとだんだんと液質がゲル状に変化する特性のことで、熱しながら混ぜ続けると次第に透明になり急激に粘度を増すこの特性を知らない人はまずいないでしょう。
分かりやすいところですとトウモロコシのデンプン「コーンスターチ」や、ジャガイモのデンプン「片栗粉」を料理で使う時のことを思い浮かべていただけたら良いです。
もう一つの性質である「老化(ろうか)」とは糊化したものが冷却されると糊液は次第に白濁し、今度は全く溶けない状態になる性質のこと。
こちらは炊いた米や焼いたパンが時間経過で冷めて固まり、水分を加え再加熱しても同じ柔らかさにならないのを思い浮かべていただけたら良いです。
当然この特性がデメリットであり、主に以下の条件下で特に起こりやすいです。
- 温度
冷たいが水分が凍結しない程度の低温(大体12℃から0℃までの温度域)が最も老化しやすいのでチルドの商品はもちろんのこと、冷凍食品も冷凍するまでの間でかなり老化する。 - 水分
50~60%の状態が最も老化しやすいので水分を極端に含まない食品(インスタント麺やせんべいなど)は老化が起きないが、米や小麦粉を原料とする製品の大半は40~60%の水分を含んでいる。 - アミロースの含量
デンプンの成分的に「アミロペクチン」より「アミロース」が老化しやすいのでデンプンの種類としては、コーンスターチや小麦などの穀物系のデンプンのほうが、タピオカなどの芋系のデンプンに比べ老化しやすい。
これらは「如何に安く大量に作り、長期保存できるか?」がとても大事な現代社会の食品業界からすれば厄介な特性ばかりであり、この短所を無くすため別の成分を添加したり、デンプン自体を化学的に加工してデメリットを発生させないようにしたものが使われることもあります。
この「デンプン自体を化学的に加工してデメリットを発生させないようにしたもの」こそが加工デンプンと呼ばれるものです。
加工デンプンとは?
先ほどの【デンプンとは?】でご紹介したように加工デンプンとは「デンプン自体を化学的に加工してデメリットを発生させないようにしたもの」であり、天然デンプンの特性を改良したデンプンの総称と言えるもの。
その為実は加工デンプンにもいくつも種類があり、どんな用途のためにどんな加工をされたのかで区別されており、ざっと挙げてみますと次の12種類。
- アセチル化アジピン酸架橋デンプン
- 酸化デンプン
- アセチル化酸化デンプン
- アセチル化デンプン(酢酸デンプン)
- アセチル化リン酸架橋デンプン
- オクテニルコハク酸デンプンナトリウム
- ヒドロキシプロピルデンプン
- ヒドロキシプロピル化リン酸架橋デンプン
- リン酸化デンプン
- リン酸モノエステル化リン酸架橋デンプン
- リン酸架橋デンプン
- デンプングリコール酸ナトリウム
そしてこれらがそれぞれどのような特徴を持ち、どのような用途で主に使われるかと言いますと以下の通り。
アセチル化アジピン酸架橋デンプン
低温で糊状になる特徴と加熱した時水分が離れていかないようにするため、膨らむのを防ぐことができる特徴があります。
変化しにくい安定したトロみが付けることができるため、タレやソース類、レトルト食品、ドレッシングなどの食品に使うのが主な用途です。
酸化デンプン
次亜塩素酸ナトリウムをデンプンと結合させて作ったもの。
低温で糊状になり、見た目も透明で安定している特徴があり、餅のツヤ出しやお湯で溶かして使う粉末食品(カップラーメンの汁やスープ)に使うのが主な用途です。
アセチル化酸化デンプン
酸化デンプンにアセチルという物質を結合させたもの。
上記のアセチル化アジピン酸架橋デンプンと特徴や用途はほぼ同じ。
アセチル化デンプン(酢酸デンプン)
低温になると粘着性が強い糊状になることからチルドや冷凍の麺類をぼそぼそにならないようにするための用途で使われたり、デンプンの鎖の一部を欠けさせていることで低分子化していることから衣や具に含まれる水分を放出しやすくするため、天ぷらやフライなどの揚げ物のサクサク感の向上の用途で使われたりします。
作りやすく特徴的にもその他に用途がたくさんあり、それぞれの用途に特化させたりじゃがいもデンプン、米デンプン、小麦デンプンなど多くの種類があります。
アセチル化リン酸架橋デンプン
アセチル化デンプンにトリメタリン酸ナトリウムを作用させたもの。
上記のアセチル化アジピン酸架橋デンプンと特徴や用途はほぼ同じ。
オクテニルコハク酸デンプンナトリウム
デンプンにオクテニコルコハク酸を作用させて作ったもの。
水を加えると粘りの強い糊状になる特性と乳化性の良さから乳化剤としての用途が多い。
そして乳化を目的として使用した場合の食品への表示は加工デンプンではなく「乳化剤」としなくてはならないため、名前が見えないことも多い。
ヒドロキシプロピルデンプン
デンプンにプロピレンオキシド、またはプロピレンオキサイドを反応させて作ったもの。
低温でもデンプンの老化が特に起きにくく、冷凍食品などに多く使用されますが、動物実験で発がん性が認められています。
アメリカとヨーロッパの一部ではヒドロキシプロピルデンプンを幼児向けの食品に使用することを禁止していますし、日本でも発がん性があることを厚生労働省も認めています。
ヒドロキシプロピル化リン酸架橋デンプン
ヒドロキシプロピルデンプンと同様にアメリカとヨーロッパの一部では幼児向け食品への使用が禁止されている成分。
用途もヒドロキシプロピルデンプンと同じように使用されます。
リン酸化デンプン
デンプンにリン酸化合物を反応させて作ったもの。
デンプンの老化防止効果が高く低温でも変化しにくいことから、用途の幅も広く冷凍・冷蔵食品はもちろんのこと、菓子パンやサンドイッチ、ケーキなどにも使用されています。
リン酸モノエステル化リン酸架橋デンプン
リン酸化デンプンに毒性が強いオキシ塩化リンなどを加えて作ったもの。
上記のリン酸化デンプンと特徴や用途はほぼ同じ。
リン酸架橋デンプン
デンプンにオキシ塩化リンなどを作用させて作ったもの。
他の加工デンプンとはことなり、粘度の強い糊状になりにくい特性があり、主に軽い食感を作るための用途で使われるのでパンやスナック菓子などに良く使われます。
デンプングリコール酸ナトリウム
デンプンをアルカリ性に変えて作ったもの。
食品に増粘安定剤(ぞうねんあんていざい)として主に使用されますが、使用できる量は他の増粘安定剤と併せて全体の2%以下と言う使用量の制限があります。
以上のような便利な特徴が加工デンプンにはあるのですが、同時に赤文字にしましたところに散見されるような不穏な特徴も持っています。
加工デンプンの表示と危険性
加工デンプンは上記のような特徴があり、避けたいものがあると思う人も多いことでしょう。
ですがどの加工デンプンが使われているのかを見分けるのは実質不可能なのです。
例えば食品添加物としての用途で使用した場合はそれをと表記する表示義務があるのですが、物質名を表示するのではなく「加工デンプン」「加工澱粉」などの簡略名で表示することが可能です。
そして「増粘剤、安定剤などの用途に主に使用する場合はその用途も表示する必要がある」ともされていますが、「主に使用する場合」と言う表記がネックであり、「結果的にそうした効果もあるが、それ以外の用途で使用している」と言った理由から表示を省略することも可能ですし、逆に一括表記で個別の物質名を表記しないことも可能です。
例えば既にご紹介したように主に乳化剤として使われるオクテニルコハク酸デンプンナトリウムはほとんど「乳化剤」と一括表示されています。
このように加工デンプンはどの加工デンプンが使用されているか分からないのが危険性と言えます。
特に健康上問題があると懸念されているのは、発がん性があるとされているヒドロキシプロピルデンプン、ヒドロキシプロピル化リン酸架橋デンプンですが、残存しなければ食品添加物として使用可能であるとして使われる5%に希釈しても危険な塩素系漂白剤「次亜塩素酸ナトリウム」を使うアセチル化酸化デンプン、酸化デンプンも好んで食べたい人はいないでしょう。
使われている総量からしてすぐに命に直結するような危険性があるとは言えませんが、蓄積すれば当然害はありますし、加工デンプンと健康被害の因果関係がはっきり分かるデータはまず取れませんからその危険性も遺伝子組み換え食品と同じく実際全く不明です。
危険性があるからと言って中々避けられるものではないですが、せめて妊娠中の方や小さなお子様が口にする時ぐらいはこの記事のことを思い出していただければ幸いです。